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Channel: まちかど逍遥
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平井邸に出会う

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花巻からの続き。

紫波町というところがある。私はその名前を聞いたこともどこにあるのかも全然知らなかったのだが、
紫波町役場という近代建築があるというので、ナビで住所を入れて行ってみることにしたのだった。
市でなく町ではあるが、ロードサイドには店が並び特に辺鄙なところではないようだ。
車を停めるところがなく通り過ぎてしまい(汗)、焦って次の角を左へ入り、さらに左へ曲がると、、、

おやっ、何だこれは!?スト~ップ!!


うわ~~っ、すごいお屋敷じゃないの。


レンガ塀は官庁建築のようなつやつやした化粧レンガが緻密に積み上げられているし、建物の2階は
板張りに互い違いに窓が開けられていて、風変わりな外観。門の大きなかえる股を見るだけでも
このお屋敷がタダモノじゃないことが分かる。


開いた門の脇に立て看板が出ていて、「平井邸公開 毎月第三土曜日10:00~15:00」とある。
えっ、入れるってこと!?

月一の公開日の時間内にここをたまたま通りかかったとは、何たる偶然。これは建物が呼んでいたとしか
思えないな!中の人に声をかけると、裏に駐車スペースがあるからどうぞと。よかった!

車を裏へ停め、あらためて建物を見ると、、、う~ん、すごい!!受付をしに中へ・・・


玄関から左右に通り土間が続くのは新潟で見たサフラン酒本舗の離れ北方文化博物館新潟分館と同じ。
座敷へ直接アクセスできる。雪国独特の造りだろうか。


平井家は伊勢の松阪から東北で身を立てようと移住してきた「外来商人」の一人で、米の取引から
始まりさまざまな商いを営んで豪商となった。十二代目六右衛門は特に事業の手腕に優れ、
酒造業や銅鉱山の経営まで手がけた。
衆議院議員や貴族院議員としても活躍した十二代目は、盛岡出身で初の平民宰相であった原敬と
政治的盟友であり、彼を招いて接待するためにこの邸宅を建てたのだとか。
1921(大正10)年に完成、原総理を迎えて盛大に宴が催された。ところがその数ヵ月後に
原敬は東京駅で暗殺されたのであった。。。


13代目の奥様が1978(昭和53)年までお住まいであったが、その後は空いていたらしい。
平井家住宅は去年(平成28年)に国の重要文化財となった。
現在はよんりん舎というところが管理されているようだが、ご当主の関係者(?)の男性が
いろいろと説明して下さった。

玄関を上がって右手の部屋が変わっている。応接間のようだが高い吹き抜けになっているのだ。
ここはもと「常居」と呼ばれる、神棚がまつられた帳場だったらしい。


1階は玄関を中心とした一部の部屋のみ見学可能だったが、最高の材が使われ欄間や建具なども
部屋ごとのテーマに合わせて凝ったデザインとなっている。


2階にも案内して頂く。階段を上ったところの廊下の窓から覗くと、、、おぉ!さっきの応接間が
一望できる!


階段横に茶室のような小さな素朴な6畳間があり、その奥には、、、すごい!44畳敷の大広間。
トラスの洋小屋構造により、柱のない大空間を実現しているという。


そして、この床の間!!こんな広い床の間もまぁあまり見ないな!総長5間半の長押と棹縁は
すべて赤松の柾目の一本ものだとか。ひぇ~!
これらの材は、経営していた銅山から切り出して使用したもの。まさに宝の山だ。




廊下をぐるっと巡って歩く。廊下の床板もまたケヤキの長尺板が使われている。


風変わりな外観を作っているこの廊下の板壁は雨戸であるが、開口部にはゆらゆらの
手吹きガラスがはまっている。東日本大震災にあっても一枚も割れなかったとか。


稀少で最高の材をふんだんに使用した邸宅だが、2階の一部の部屋には、節のある柱が使われ
床の間の一部の仕上げが未完のままおかれている。
あえて完璧にせず、まだまだこれから頂点に向かうのだという験担ぎのようなものらしい。


最後に、お風呂はどうなっていましたかと聞いたら、非公開部分だが特別に見せて頂いた。
おぉ~、広々した浴室は那智黒石を埋め込んだ美しい床、天井は唐傘天井だ!




そして今も清潔感を保った白タイルの縁に控え目なマジョリカタイルのボーダーが!

昭和4~50年代頃にステンレス浴槽に取り替えたと思われるが、床や天井はその時に
手を加えたのだろうか?いや~~しかし、素敵なお風呂場だ。

こんな東北の田舎町にこんなすごい建物があるとは、いやはや恐れ入った。
それにしても、全く知らずに偶然通りかかったとはすごい縁だ。
思わぬ寄り道で長居してまた時間が押してしまったが、見つけてよかった!!
ありがとうございました!

続く。


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