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Channel: まちかど逍遥
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花巻の建築と馬づら列車

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鉛温泉からの続き。

藤三旅館に泊まった翌日は車で花巻市街まで戻り、旧花巻町役場を見にいく。ナビに従い近くまで
来たが、車の入口が見当たらず公園の周りをぐるりと回ったところ、、、おや、ここは何だ?
広い敷地に古い木造の工場建築が建ち並び、事務所棟もかなり年季が入っているな。


土曜日だったが事務所には人がいるようだったので、車を停めて見学させてもらえないかと声をかけて
みたが、申し訳なさそうな口ぶりで、ちょっとお断りしています、とのこと。やっぱりか(苦笑)


釘を製造している工場で、戦前からの建物は今も現役で稼働しているという。事務所棟は戦後
昭和30年代のものらしい。写真を撮ってもいいかと聞いてみたが遠慮してほしいと。んー残念。


まぁ通りすがりで外から撮るぐらいなら、、、とのことだったので数枚だけ。
工場は企業秘密の面で写真撮影を厳しく禁止しているところも多いし、古いところは騒がれるといろいろ
困るのだろう。


で、その向かいにあるのが肝心の旧役場だ。もう一度車で回ってみるが、えっ、ここ?というような
狭い入口から無理やり車を突っ込んで・・・何とか停めた。出る時どうする?後で考えよう(苦笑)。
現在は花巻市民の家という、公民館のような用途らしい。建物は瓦屋根の和風の木造の総2階建て
だが、洋風を取り入れた縦長の上下窓が。1929(昭和4)とはちょっと意外だな。


おや、あれは・・・敷地内に列車の車両も展示されているぞ。


おぉ、馬づら列車!兄から写真を見せてもらったことがあった花巻電鉄だ。これがそうかぁ。
そういえばさっき、工場の前の道の脇に、まっすぐな遊歩道が伸びていたが、あれが線路跡だったんだな。


花巻電鉄は、点在する温泉地へのアクセスのために東北初の電鉄として1915(大正4)年に開業。
県道脇を走る併用軌道であったため幅の制約があり、車体を細くしなければならなかった。

ほんとに、細っ!!まさに馬づら(笑)

かわいい列車にとことこ揺られながら温泉へでかける、旅の風情は何ともうらやましい。
しかしやはりモータリゼーションが進む時代、昭和40年代に順次廃止される。
説明板にはありし日の写真がたくさん載っており、細い車内にお客が文字通り膝を突き合わせて
ぎっしりと座っている様子や、のどかな風景の中をのんびり走る様子。そして最後の日、全身を
花で飾られ線路にまであふれる人々に見送られる雄姿・・・じーんと胸を打つ光景。
あぁ、鉄道ってやっぱり単なる移動の足っていうだけでなく、長い時間地域の人々とともに過ごした
同士のようなものだなぁ。暮らしの中、風景の中、人々の心の中に深く入り込んでいる。
廃線ってほんとに寂しいものだ。

花巻電鉄線路跡と旧車両デハ3は近代化産業遺産となっている。

スチールの盤が車体と同じ塗装に。かわいい~♪


さて、公民館の外観をひととおり撮って、正面のドアを開けようとしたら、カギがかかっている。
えーっ、休みなの!?


ガラスに顔をくっつけて覗き込むと、ひし形の窓があってその向こうに全面板張りのホールが。
うー、ん良さそうじゃないの!でも、内部を見れないのは残念。。。事前に電話して見学を申し込んで
おくべきだったかなぁ(汗)


側面も写真を撮ろうと回り込んだら、こちらにもドアがあり、開いた!なんだ、こちらが入口だったのか。
上がって事務所を覗いたらおっちゃんがいたので、見学をお願いするとどうぞどうぞと快諾。
大阪からですと言ったら、以前取材を受けた時の記事のコピーを見せてくれたり、館内を案内して
くれたりと親切にいろいろお話を聞かせて下さった。


もともと現在の市庁舎がある場所に建っていたのを、新庁舎の建設時に解体、この場所に移築された。


部屋の中央に一本も柱がなく板張りの体育館のような大空間。元はここに机を並べて執務して
いたのだろう。今はこの大空間を生かしてダンス教室などもやっているらしい。


ひし形の窓は当初からのものらしい。控えめなおしゃれ心が現れている。


2階ではヨガの教室をやっていたが、おっちゃんに連れられて見学。失礼しま~す。
役員室、と書かれたドア。


内部は全体的に装飾が少ないが、階段まわりは洋風の手すり子を並べ洋館風になっている。
しかし柱頭は擬法珠。おっちゃんお勧めのアングル(笑)

花巻町役場から花巻市議事堂を経て、市民の家へ。人々とともに歳をとり、晩年をゆっくり
すごしている、そんな風に感じられた。

すみずみまで見せて頂いてありがとうございました~
無理矢理突っ込んだ車を出すのに苦労していたら、おっちゃん、わざわざもう一度出てきてくれ
車道へ出るまで誘導もして下さった。感謝!

続く

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