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Channel: まちかど逍遥
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GW新潟 香林堂と今井銀行

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新潟の続き。

レンタカーで松之山温泉までは高速1時間+下道1時間、約2時間の予定。
一面の田んぼの真ん中を雪山に向かって一直線にドライブ。楽しい~♪
それでも1時間走り続けは集中力が持たないので、、、途中のまちで休憩がてら建物めぐりをする計画だ。

まずやってきたのは、燕にある長善館という建物。のどかな田舎の集落の中の広い敷地に洋館付きの
建物が建っていた。平屋建てのそれほど大きくない和館にくっついた白い洋室はちょっと唐突な感じ。
裏に建つ資料館で声をかけたら開けてくれて、内部も見学することができた。


長善館とは漢学者鈴木文臺によって開かれた私塾で、1833(天保四)年というかなり早い時期に創設され、
約80年間に千人以上を教育し、北越地域の人材輩出に寄与してきた。


当初は敷地内に建物がたくさんあったが、今残っているのは一部だけのようだ。模型を見ると確かに
ぎっしり建っている。現存する建物は昭和12年に建て替えられたものといい、和館はごく普通。


洋館部分は診療室に使われていたのだとか。言われてみればそんな雰囲気も感じられるな。
今では物置になっていたが明るく比較的きれいだったので改修されているのだろう。
郊外の集落の中にあるマイナーな建物だが、地域の遺産として大切にされているようだった。


さて次に同じ燕市内の香林堂へ。こちらは市の中心部でアーケードが続く商店街のど真ん中だ。


高さ4mぐらいあろうかという高い塀に囲まれた敷地の中に建つ赤レンガの建物。その壁に大きく書かれた
「香林堂」の文字が目に飛び込んできた。おぉ!


塀からつながる広い間口の町家と、さらに進むと今度は黒っぽい焼き過ぎレンガの洋館が。


あぁ、これがもう一つの物件、旧今井銀行だ!同じ敷地内にあったのか。
今井家住宅主屋、新座敷、そして西洋館(赤レンガの建物)、旧今井銀行店舗はすべて登録有形文化財。


花崗岩を窓まわりに使いパラペットやひさし部分は銅板張り、中央にはシンボリックなレリーフを施すなど
レンガ建築としてはかなり装飾的である。しかし入口も窓もふさがれてしまっているな。


アーチ型の入口のキーストン部分に人の顔が!!これは福の神か、それともただのおっさんか!?
旧今井銀行店舗は1920(大正9)年の築。


雁木の下に「香林堂入口」と書いてあったので、格子戸をガラリと開けて「すみませーん」と声をかけたら、
上品な年配のご婦人が出てこられた。通り庭が奥まで通っている町家形式の空間。
建物を見学できないか尋ねると、すでに商売はやめており今は純粋な居宅なのだとか。なので建物は
公開しておらず、丁重に断られた。そうか、、、仕方ない。ちなみに香林堂とは配置薬の商売だったという。


少しお話を伺ったところ、今井家はもともとは広大な田畑を所有する大地主であった。
今井銀行もやはりここの家が創業家で、もともとは天候の影響を受けやすい小作人が、現金で貯蓄することで
生活を安定化できるようにと金融業を始めたのだそうだ。長岡藩へもお金を貸したり、のちには藩金の
運用管理も任されたとか。他にも、いわゆる総合病院を設立したりと、地域の近代化に貢献された。


戦後の農地解放により土地を取り上げられてしまったため、配置薬の事業を興されたという。
地主時代のネットワークを生かし越後全域に商売を広げ成功されたが、時代が変わり数年前に商売を
やめられたということだった。
ご好意で暖簾の少し先まで入れていただいたが、天井の高い座敷には大きな神棚があり、
その奥にはまださらに部屋が続いているようだった。


80を越えられてなお全身から漂う気品。やはり13代続く越後の大地主の大奥様は違うなぁ。。。
長々とお話を伺ったお礼を述べ出ようとしたら、入口の格子戸の内側に大きな内開きの木戸が
あることに気づく。木戸にはまた小さな扉があった。珍しく見ていたら、夜には木戸を閉め小さな扉と
格子戸を開けて出入りするのだと教えて下さった。昔は刀を抜いたままで入りにくいように入口を
小さくしていたと聞いて納得。主屋は江戸後期、新座敷は明治中期に建てられたものという。

赤レンガの建物も今井銀行も内部を見ることはできなかったが、江戸時代から続く大地主の暮らしについて
リアルなお話を伺うことができてとても貴重な経験だった。ありがとうございました。

ショーケースに並ぶいちご大福に引き寄せられてお向かいの和菓子屋さんに入ったら、とても気さくな
ご主人と奥様で、少し立ち話を(笑)。「今彦菓子店」という名からもしやと思ったが、やはり今井家の
遠い親戚だとのこと。赤レンガの建物は蔵かと思っていたが、ゴージャスな応接室だったそうだ。


今井家住宅の裏道の雰囲気がよいとの今彦さんのお勧めにより、ぐるっと一周。そこは昔の土手道らしく、
木漏れ日が注ぐ気持ちいい散歩道だった。


続く。

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