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Channel: まちかど逍遥
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旧台南庁長官邸のタイル

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2019年夏の台南の続き。


翌朝、昨日チェックしておいた駅前のレンタルバイク屋さんで電動バイクを借りる。免許の要らない電動バイクは
時速30km制限だが、金門島で借りてすごく便利だったので本島でも借りたいと思っていた。
これでかなりフットワークがよくなる。予備バッテリーも積み込んでもらい、いざ!ゆるゆると出発。

台風のせいか、恐れていたほど気温は高くないのだが、湿度は高い。
まずは昨日定休日で見れなかった旧台南庁長官邸に、9時に再びやって来た。
ところが・・・また柵が閉まっているじゃないの。えっ、、、今日も休みなの?オタオタしていると、ガガーっという
音とともに自動でゲートが開いた。あぁよかった!


この旧台南庁長官邸は、日本統治時代の1898(明治31)年~1906(明治39)年に、建てられた和洋併設型の建物。
当時台南地区の最高行政長官であった台南庁長官の住まい(和館)兼執務スペース(洋館)であった。
ここに本業タイルがあることを1年前に聞いて知っていたが当時はまだ非公開で、その後一般公開され始めたことを
フェイスブックで知ったので、次に台南へ行く時には必ずと思っていたのだ。


明るい芝生のお庭の中央少し左寄りに、コロニアル風のベランダ付きの洋館がどんと建っている。
その洋館の右側にはぽっかり空いたスペースがあるが、ここは元々和館が建っていたところだ。
1998(平成10)年の火事により全焼、今はレンガの基礎と土間コンクリートだけが残っている。


そこに青い染付の銅版転写タイルが。あぁここにあったのか!昨日柵越しに覗いても見えなかった(苦笑)
5×7=35枚と4×8=32枚。うひょ〜〜!!これはまさに瀬戸の本業タイルだと思うが、見たことのない柄だな。


台湾には、日本統治時代に日本製のマジョリカタイルが大量に入ってきて、伝統民居の屋根や壁に貼られた。
近年その数は急激に減っているものの、南部や離島を中心にまだ結構な数残っており、これまでに私も各地で見てきた。→台湾の記事一覧
しかし同じ日本製のタイルでも瀬戸の本業タイルは台湾ではまず見かけない。印花文の敷瓦は時代的に少し早いが、
銅板転写の本業タイルなどはマジョリカタイルと時代がほぼ重なるにもかかわらず、である。
好みの問題もあるだろうが、本業タイルは若干大型で重いから運ぶのが大変だったためかも知れない。
そのあたりも含め、私は本業タイルの台湾での使用例にとても興味を持っており、情報収集する中で本業タイルの
使われている事例もちょいちょい見つかってきた。


新北市の三峡にある救生歯科医院は、明治後期と思われる古い印花文の本業敷瓦が大量に残っている物件であり、
はじめて見た時は度肝を抜かれた!その他の物件はまたおいおい紹介することにしよう。


この和館の間取りは不明で、タイル貼りの部分がどういう場所だったのかははっきりしないが、おそらく、
玄関とお風呂場ではないかと推測する。中央が擦れて剥げているのが玄関ではないか。


あっちから、こっちから、真上から、這いつくばって、何枚も写真を撮る(笑)
朝イチで他のお客さんが誰もいなかったので気兼ねなく撮ることが出来たのでよかった!


ところで、もう一種類敷瓦があるはず。和館跡には見当たらないがどこにあるんだろう、洋館のお風呂だろうか?
もしかしてそちらは改修時に剥がされてしまったか、上に床板を張られてしまった可能性もあるか・・・!?
・・・しかしそんな一抹の不安は洋館の入口に来た時吹っ飛んだ。あった!!


エントランスのポーチの床に古いタイプの本業敷瓦が四半貼りに!うぉ~~~っ!!すごい~~!


これは小石川後楽園の得仁堂に一枚だけあった敷瓦と同じ模様だ。沈文の部分に呉須で手彩色したもので、
本によればこのタイプの敷瓦は明治前期に作られている。模様は蘭の花だろうか。
洋館なのにこんな日本っぽい、禅寺の床みたいな重厚な敷瓦が四半貼りされているなんて・・・これぞ明治建築!


ん、しかしちょっと模様がくっきりしすぎているな?質感が瀬戸の本業敷瓦っぽくない感じだし全体的に反っている。
よく見ると全体のうち中央部の数枚は雰囲気が瀬戸っぽい。ははぁ、そうか。全部がきれいに残っているわけはない。
傷んだり欠損していた部分をレプリカで埋めたんだな。
お庭の手入れをしていたおじいさんに、これはレプリカでこれは本物ですね?と聞いてみたら、そうだそうだ、と。
無地の既製品でなく、ちゃんとそれらしいものを作ってはめ込んだ努力はあっぱれ!
そしておじいさんは、10時から中国語の解説の人が来るから、と教えてくれた。全く言葉が通じなくても分かるものだ(笑)


この建物は戦後、台南第一高級中学の教員宿舎として使用されたりしたが、長らく空き家となり老朽化していた。
台南市定古蹟となり2014年からの修復工事を経て美しい姿によみがえった後は、一時市長が迎賓館として
使用していたが、一般公開されるようになった。


建物の中はすっかりきれいになっているが、一部壁の内部構造が見えるようにむき出しにしてあり説明が
書かれている。木摺板と呼ばれる下地の上に漆喰を三層に塗り重ねているのが分かりとても興味深い。
台湾では建築の技術的なことまで分かりやすく紹介されているのが素晴らしいな!
オリジナルの雰囲気を最大限に再現したこの建物の修復工事は「国家卓越建設金質奨」を獲得したとか。




中国語の建物解説が始まったが内容が理解できないのは本当に悔しい。改修前の状況は?和館の間取りは?
敷瓦についての調べは?傷んでいて取り除いた敷瓦はどこかに保存されてるのか?・・・なとなどいろいろ
聞きたいことがあったが、解説のおっちゃんも英語はほとんどできず、込み入ったことは聞けなかった。。。(悔)
それでもおっちゃんはフレンドリーで、日本からこのタイルを見に来たと言って単語を並べて話をしていたら、
この近くの旧台南知事官邸も見て来たらいいよ、と教えてくれた。


あとから気づいたのだが、旧台南庁長官邸の門から建物までのアプローチのインターロッキングの模様は
あの洋館のエントランスに敷かれた印花文敷瓦と同じ、蘭の花のシルエットにしてあるんだな!
敷瓦の模様から採るなんて、粋!


続く。

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