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唐津の近代建築 その1

呼子からの続き。

唐津の町はずれに一つ見たい建物があった。ちょうど戻る途中にあるので、車で立ち寄ろう。
唐津市歴史民俗資料館。観光案内所でもらった唐津マップには載っていなかったのだが、何かの写真を
ちらっと目にしたのだった。

入口がちょっと分かりにくい場所でぐるぐる迷ってしまったが・・・
うゎ~!!なんだこれは!すごいじゃないの。
「休館中」の札がかかっているが、どうも定休日ということではなさそうな雰囲気。
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石炭の輸出を手がける三菱合資会社の唐津支店として、1908(明治41)年に建てられたもの。
唐津もまた石炭の産出地であり、唐津港は積出港として栄えたのだ。
この建物が建つ場所は、近代的な港湾として埋立て整備された西唐津港の先端である。
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漆喰塗りのハーフティンバーと下見板張りを組み合わせた装飾豊かな外観。中央の三角の破風の後ろに
立つ塔屋根が明治の建築っぽさを感じさせる。
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左右の屋根にもドーマーウィンドウ状の装飾があって、洋館らしさ満開であるが、横から見ると入母屋屋根
になっているのが妙な感じ。
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本館の横にはレンガの小屋などいくつかの附属屋がある。

裏側へ回ってみると、ぐるりとベランダが回っており、庭の向こうはもう海である。
今はバイパス道路が港の上空をまたいでいるが、かつては石炭を満載した大型船が続々出入りするのを
ここから一望できたに違いない。
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・・・しかし、冷たい海風吹きつける防波堤の先端は凍えそうに寒い!!
しかも今日は月曜日。休みを取っているのだがやっかいな電話がかかってきたりして・・・
ブルブル震えながら電話しながら、柵の隙間から写真を撮って(苦笑)
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1980(昭和53)年から翌年にかけて復原工事を行い、昭和55年に県の重要文化財になった。
現在は「休館中」だが、特別公開も行われているようだ。
こんなすごい建物なのだから、唐津観光マップに載せておいてよ、唐津市さん。
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そのあと、こちらは国の重要文化財となっている旧高取邸を見に行く。昨日Iさんが見てきて
すごかったと言っていたので期待は大きい!!・・・しかし、今日は月曜日、一般的に美術館や
博物館は休みの日だ。駐車場に入れる前に念のために電話して確認しておこう。

「すみません、今日は開いていますか?」「今日は定休日です」「ええっ!!」やっぱり・・・(涙)
今日は業者を入れて工事をしているためたまたま係の方が詰めているのだという。ここまで来て
すごすご帰るのは悔しい。何とかお庭から見るだけでも、とお願いして通用門から入れてもらった。
正門のほぼ正面に張り出した洋館と高い煙突が目に飛び込んでくる。その左手には和風の玄関。
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左手は居室棟ということで、割と地味な外観だが、右側の方はちょっと趣が異なり、明るい色の土壁や
唐破風の玄関がちょっとハレの雰囲気をかもし出している。
そちらの大広間棟には何でも能舞台があるのだとかで、話しているうちに、同情的な気分に
なったのか、能舞台だけでも見て行きますか、と中へ入れてもらえることに!やった~
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高取邸は「肥前の炭鉱王」と呼ばれた高取伊好の旧宅。高取伊好は養子として高取家に入り、
工部省鉱山寮で鉱山学を学んだ後、現場へ戻って数々の炭鉱を開発・経営して成功した。
地元や社会事業への寄付など社会貢献にも力を尽くしてきた唐津の名士である。

居室棟の裏口から入って大広間棟の中央にある能舞台へ行くまでの間に、仏間やら本玄関やら
洋間も一通り見ることができた。居室棟も外から見た印象よりもずっと内部は豪華なつくりだった。
(見えていたのは台所や女中部屋部分だから簡素だったのだな)
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寝室と書斎には背中合わせで暖炉が組み込まれている。床に鶴亀模様のタイルも敷かれていた。
新居浜の旧広瀬邸や住友活機園でも和室の暖炉を見たが、やっぱり畳に火の粉が落ちないか、
心配になるなぁ。。
窓を締め切られて薄灯りの中で見る洋間もなんとも魅惑的だった。・・・あぁ、写真を撮りたい。

そして大広間棟へ。この建物は接客空間として1905(明治38)年に建てられたもの。
高取伊好の全盛期だろう。ちなみに居室棟は1918(大正7)年頃という。
建具はふすまではなくすべて板戸で、色鮮やかな杉戸絵が描かれている。

能舞台はとびきりきらびやか!天井は高くつやつやと黒光りする床、背後には老松。
15畳の舞台の手前には同じ広さの畳敷きの広間、それぞれ左右には控えの間(?)、後ろには後座
という部屋がある。建具をはめかえることで舞台を広げることができたり、畳を敷いて杉戸を
裏返せば宴会用の大広間として使えるようになっていたり、機能性や拡張性が計算し尽された
空間なのである。すごい!!

二階にも上がり、係りのおっちゃんがお気に入りという、とても明治のデザインとは思えない
現代的な動物モチーフの欄間や、孔雀の透かし模様の欄間などを見せてもらった。
この日は休館日で雨戸が全部閉められており、隣室の灯りを点けると、放射状に広がる光によって
左右の壁にくっきりと孔雀が映し出された。おお~っ!幻想的・・・

駆け足とは言えすっかりいろいろ見せてもらって、来た甲斐があった。開館日なら雨戸も開けて
窓から海も見晴らせただろうが、閉め切って暗い状態を見れたのも貴重だった。
ほんとにありがとうございました!見どころ満載で、もう一度じっくり見に来たいなぁ~
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車を返して、まちの中心部へ。
唐津のまちなかには小さな商店などの建築もある。これは1923(大正12)年築の「うなぎ竹屋」。
現役のうなぎ屋さんで、建物内部には銘木が多数使われているとか。
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こちらは1933(昭和8)年築の旧村上歯科医院。複合施設として活用されている。
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唐津のまちなかを流れる町田川に架かる三連アーチの新大橋と復元された辰巳櫓。
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こちらは札の辻橋。
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唐津城の石垣や堀などがまちの中に残っているというより、お城の中で暮らしている、という
印象を持つ町である。

続く

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