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Channel: まちかど逍遥
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かどや(旧広野家住宅)のタイル

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2019年1月の伊勢・鳥羽の続き。



大王崎から鳥羽のまちなかへ戻ってきた。「鳥羽なかまち」と呼ばれる商店街の中ほどに建つ、
「鳥羽大庄屋かどや」。今回の旅の2大目的は二見浦とここだった。


角屋と呼ばれた広野家は江戸時代には大庄屋を務めた家で、戦後まで薬舗を営んでいた。
旧鳥羽街道がクランク状に曲がっている、文字通り角に建つこの建物は、1825(文政8)年に建てられ、
1884(明治17)年までに増改築された。2004(平成16)年に鳥羽市に寄贈されたのち、明治期の姿に
修理復元され、一般公開されている。主屋、内蔵、土蔵が登録有形文化財となっている。


入口付近には古い薬の看板がたくさん飾られていた。


タイルも展示してある。瀬戸の銅板転写本業タイルだ。う~ん、楽しみ楽しみ!


鳥羽随一の資産家であった広野家、豪華絢爛ではないが遊び心ある意匠があちこちにあってとても見どころが多い!
特にガラスはとても豊富なデザインが一堂に会す。・・・なので次回にまとめることにして、今回はそれ以外を。
お庭に面した座敷は主人の間。落ち着いた風情で、書院の欄間など繊細な意匠が見られる。


廊下のガラス戸の上にぽつぽつ穴が空いているのは虫食いではなく(笑)北斗七星をかたどった意匠だ。天井は網代。


この釘隠しは手裏剣みたいだな!?


赤い壁、曲がった木の落とし掛け、古い扇などの絵を集めて仕立てた襖など、数寄屋風の粋なインテリア。


欄間のデザインは海辺らしく二枚貝や巻貝がモチーフになっている。


こちらは千鳥。


かわいい真向兎の釘隠し。


押し入れの内張りに使われた明治時代の新聞。広告からも当時の世相が伝わる。


箱階段もあった。今はふさがれていたが。。。


古写真がとても興味深い。今ではちょっと想像がつきにくいが、昔はなんとこの建物の東側はすぐ海だったようだ。
船を横付けして商品などを蔵へ直接運び込むことができた。敷地の東側を走る近鉄線は、1929(昭和4)年に
開通。現在の海岸線はさらに国道167号線の向こう側となっている。


そして・・・こちらが目当ての本業タイル貼りの流し!!うひゃ~~素敵!!
ここは江戸時代に建てられた棟に当たるが、流しは明治中期以降に作られたものだろう。
元々は土間だったような雰囲気だ。


流し本体は人研ぎで造られており、その表面に本業タイルが貼られているのだが、驚くべきは、人研ぎ部分との
境界のなめらかさ!平らな部分がツライチになっているのは当然なのだが、この角の部分を見て!!


柔らかく丸みを帯びた人研ぎの曲面にあわせてタイルもきれいにカットし、段差ができないように仕上げてあるのだ。


硬いタイルのエッジがどこにも出ないように。また隙間ができるとそこから剥がれたり割れたりするので、
隙間ができないようぴったり密着させてある。なんと丁寧な仕事だろう。あぁ静かに感動・・・




入口に展示してあったタイルの説明書きにはお風呂場にも使われていたとあったが、お風呂はもうつぶしてしまった
ようだ。そして、もう1ヶ所タイルがあると係の方が案内してくれたのは、現在は倉庫になっている昔のトイレ。
見れば壁に2色刷りの銅版転写の本業タイルが貼られていた!


この建物を公開するにあたり実際に使用できるトイレとしてリニューアル工事をし便器も入れ替えたのだが、
問題があり使えないまま倉庫になっているとか。


奥の部屋に数台のオルガンが置いてあった。広野家で所蔵していたものに加え、寄贈されたものも。




松阪のメーカー、長尾風琴製造所で明治30年代に製造された長尾オルガンは、日本に3台しか現存しない
大変貴重なもの。2000(平成12)年に、広野家の蔵から「発掘」されたそうだ。募金で修復費用を集め、
オルガン修復家の手によってよみがえった長尾オルガンは、年に何回か演奏されるのだとか。




鳥羽・長尾オルガン協会、会員募集中。興味ある方はどうぞ。


続く。

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