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Channel: まちかど逍遥
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栄楽館の意匠たち 1

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伊賀上野の続き。

さてやってきたのは栄楽館。ここは「栄楽亭」という料理旅館だった建物で、もとは江戸時代から続いた製薬問屋を
1873(明治6)年に改造したとか。栄楽亭が1983(昭和58)年頃に閉店したあと、建物は市に寄贈されて
「栄楽館」と名を変え、生涯学習などの文化活動拠点として市民に利用されてきた。


しかしこの先、栄楽館はいったん閉館したあと改修してまた違う形で利用される計画ということで、この週末が
閉館前の最後の日だということを、数日前に知ったのだった!最後に見学に来て下さいとも書かれていた。
中はかなりすごいらしいということを聞いていたので、気合を入れて乗り込んだのだった。


・・・果たして、ものすごかった・・・ディテールの見所が満載!!


まずは玄関の正面この六角窓がすごいインパクト!


実際これは部屋の戸なのだが、六角形の部分にすりガラスと透明ガラスがはまっている。


この玄関正面の部屋を含め3つの部屋が続きで並んでいる。順番に見ていこう。
廊下に面して大きな丸窓と足元の窓がある。丸窓の部屋側には組子の格子がはまっていて、廊下側には木の枝が
あしらわれている。夜になって灯りが点ると、幾何学的な線と自然の木のシルエットが重なって浮かび上がるのだ。




そして・・・なんじゃこりゃ?壁にハシゴのような・・・竹か。まるで床から生えているかのように、長いものは
長押を貫いて天井まで至る。なんという遊び心。面白いなぁ!竹はこの館でいろんな意匠に使われている。




南側廊下との境の建具が美しい。下1/3が襖になっていて、銀紙の上に濱邊萬吉氏の大津絵が2枚ずつ、
計8枚貼られている。素朴な線ながらいきいきとして、絵本の挿絵のようなほっこりした雰囲気。




その隣の部屋。変形の床の間は簡素に見えるが、床柱は野趣ある皮つきの木、落としがけには燻されたような
丸竹が使われている。


廊下に面した欄間は蜀江文の組子。壁のくりぬきがアーチっぽい形になっている。




この部屋は六角窓の部屋と続き間になり、間の欄間は竹の透かし彫り。「栄楽亭」の額が架かっている。


そして六角窓の部屋。


部屋の中から見る景色はまさに額縁に切り取られた絵画。


床の間の天袋の引き手が素敵!雲形?


湯沸し室になっている奥の小部屋はさすがにすっかり改装されてしまっていたが、元はトイレや手洗い場だったの
では!?と想像。その手前の廊下にはくもりガラスのはまったこんな長円窓が。


南庭に面した奥の部屋は廊下をはさんでひとつだけ独立した形になっていて、隠居部屋にぴったり!?
炉が切ってあるので、茶室として使われていたのだろう。床框には、色違いの竹を交互に並べて。


天井を見上げてびっくり!皮つきの細い丸太を放射状に並べた傘天井!うわぁ~~


これはどこの引き手だったか・・・とにかく襖の引き手はほとんど部屋ごとに全部違うものが使われているので、
またおいおい紹介しよう。

竹を使った建具や壁の装飾などは江戸時代のものが残っているそうだ。但し、どれが薬種問屋時代のもので
どれが旅館時代のものなのかは不明。。。

続く。

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