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Channel: まちかど逍遥
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東京のタイルめぐり3 ~青淵文庫

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東京の続き。

青淵文庫に到着。四角い箱型のこじんまりした建物が旧渋沢庭園の静かな森の中に佇んでいた。
遠目にはあまりに地味で、それが写真で見ていたあの素敵なタイルの建物であるということが分からなかった(笑)


表面のタイルの質感がわかるぐらいまで近寄っていくと、感動がこみ上げてきた!


渋沢栄一の傘寿と子爵に昇格したお祝いに竜門社が贈った建物で、1925(大正14)年に完成したが、収蔵する
予定だった蔵書が全て関東大震災で焼失してしまったとは・・・建物を贈った方も贈られた方も無念さはいかばかりか。。。
主に接客の場として使用されたのだという。


あぁ、見たかったのはこのタイル!


渋沢家の家紋「丸に違い柏」をモチーフとしてどんぐりもあしらわれたかわいらしいタイルで、
アイシングのように乳白がかった緑色の釉薬が表面にこんもりと盛り上がっている。


平らな部分の表面は布目がつけられ、模様の輪郭は丸彫りしたようにくっきり深く凹んでいる。溝の内側は
四辺の面取りされた部分と同じように粗面になっているので、型抜きではないと思う。表面に布目をつけたあとに
模様を彫り面取りをして、釉薬をスポイドなどで盛り上げたのか??それにしても緑色の釉薬がたっぷりかけられて
いるのに溝の中に全くというほど垂れていないのも不思議。


角の役物も凹凸が大きくいい感じ!


テラスに面した柱まわり、窓まわりのみでなく、側面や裏側の窓もすべてこのタイルで取り囲まれている。
室内側にも同じタイルが使われていて、全部で何と2700枚もあるとか!!


尚、タイルはオリジナルと復刻品とが混在しているらしい。
このタイルの復刻のレポートをず~っと前にどこかで見た気がするのだが・・・もう全くわからない。
どうやって作ったのか、今詳しく見てみたいなぁ。




ところで、このタイルは裏足も確認されており京都の泰平居のタイルだと判明している。
しかし、「にっぽんのかわいいタイル」の著者加藤郁美さんによると、泰山タイルの乱貼り施工事例である
ジェームス邸やきんせ旅館にこれと同じ柏文のタイルが混じって貼られているとのこと。私もその2ヶ所を
見たことがあり、昔の写真を見返すと確かにあった。また北出工芸(こちらは施工者を特定できていないと思う)
という京都の商店の内壁にも貼られているのを見た。ここにも先述の2ヶ所と共通するタイルが見られる。
3ヶ所とも陶磁器試験所の香りがぷんぷんする(笑)。以前モザミューで聞いた陶磁器試験所の講演でも、
試験所出身者が同じデザインをそれぞれ作ったという話もあったので、不思議な話でもないのかも。
できることなら全部裏返して見てみたいが(爆)


テラスの柵には「壽」の文字をあしらった鋳鉄のグリルがはめられている。


外壁のタイルだけでずいぶん長いこと楽しんだが(笑)、そろそろ中へ。


玄関ドアを開けて一歩踏み込むと・・・おぉ!!足元にもタイルが!モザイクタイルで表現された八芒星の模様は
イスラムっぽい印象だが、これもくすんだグリーンや茶系統など、外壁のタイルと同じ色調が使われている。


内部は「閲覧室」と階段の見上げアングルのみ写真撮影可ということだったが、玄関タイルの写真も了承頂いた。


そして、閲覧室へ一歩入ると、有機的な温かみを感じさせながら、落ち着いた空間だった。


4ヶ所の窓の欄間部分にステンドグラスがはまっているが、中央の2枚のみ、ステンドグラスの中央に「壽」の字と
柏の葉をデザインした模様が入っている。タイルと同様どんぐりも。
白抜きした部分は火灯窓の頂部をつなぎ合わせたような形で、左右端の昇り龍、降り龍とともに東洋の香りをかもし出す。


カーテン、じゅうたん、細かい透かし模様の入った照明器具も見ごたえあり。どっちを向いても見どころ満載!!




室内のタイルは金色が使われていた。外部のは剥げたのか元からベージュなのか。それとも室内のが復刻品だろうか?


こちらはビルトインの電気ストーブだとか。このグリルもどこか東洋風なデザイン。


網の中には電熱コイルのようなものが見えた。


写真撮影の制限があると言っても、メインであるこの部屋で写真を撮れたらほぼ100%満足。


この階段の美しいこと。。。長六角形をモチーフにした手すりが軽快。


あぁ素晴らしいなぁ!!美しいものを見て心もきれいになった気がしつつ、青淵文庫をあとにする。

続く。

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