Quantcast
Channel: まちかど逍遥
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1991

秋田の建築めぐり4 高砂堂

$
0
0
秋田の建築めぐりの続き。

翌朝はのんびりホテルの朝食を食べ、今日はどこへ行こうかと考える。秋田市内はそれほど近代建築が
多い訳ではなく、昨日のうちに中心部をだいたいまわったので、今日は鉄道で近郊の別の町へ行こうか。
でも全然チェックできてないし、田舎は列車もバスも頻繁になくて不便。最終日なのでバタバタしたくないしな。。。


・・・というわけで、最終日も秋田市内でぶらぶらすることに。チェックアウトして荷物を預かってもらい、
ひとつ見れていなかった近代建築、秋田聖教主教会を目指して歩き始める。
ハスと睡蓮が盛りのお堀端を歩いて行くと、おや、あれは?なんだかすごく迫力のある建物じゃないの!?


近寄ってみると、閉ざされた門扉に「県立美術館は移転しました」という張り紙。ははぁ、あのキレイな
コンクリートの美術館ができる前はここだったのか。じゃあしかし、この建物はどうなるの??


木がうっそうと茂っていて全貌が見えない。。。緑青色の反り返った合掌型の屋根にまん丸目玉のような
ドーマーウインドウが並んでいる独特な形。どこかよく見えるところはないか、、、


周りをウロウロしてみたがどこからもよく見えない!う~ん。。。もどかしい。


お城をかすめるように歩きながら、川を渡ると、りんごもちが有名な老舗のお菓子屋、高砂屋があった。
ここも和風建築だが古い建物だな。裏の方まで続いている。棟を正面に向けた寄棟屋根が老舗らしい風格。
ささっと外観を撮って教会へ向かおうと思った時、表のガラス戸越しにチラッと見えた店内、おやっ!?


よし、りんご餅をお土産に買おう。ガラッと戸を開けて入ったとたん、、、うわぁ!


型押し鉄板張りの洋風の天井!床は石畳、テラゾーに蛇紋岩貼りのショーケース、なんとなく
アールデコっぽい戸棚。周囲には屋号の入った回転窓が。


接客に出てこられた女性に写真を撮っていいですかと聞いたら、どうぞどうぞと言っていろいろと
説明までして下さった。この家の方ではないようだが長年ここで勤めておられるのかよくご存知だった。


20年ぐらい前に前面道路の拡幅工事のために9m曳家をしたそうな。現在道路と建物の間には広い石畳の
スペースがあるが、その部分はかつて屋内だったと言うのだ。しかし・・・建物は奥まで続いているじゃないか。


全部を曳家したんですか?いえ、裏の工場とこの建物の間にあった部分を壊して、店の建物だけを曳家したんです。
中庭も昔はもっと広かったんです。ベンチを置いている部分は接客スペースとして新たに作ったんですよ。
ははぁ、なるほど!バックヤードの一部を犠牲にしてこの豪華な店を残したのだな。


道路の拡幅では近所は皆取り壊したり建て替えをして、ここも取り壊すかという話もあったんですが、
この建物を残したいという店のご主人の思いがあって、曳家して残すことになったんです。
素晴らしい!よかった!ありがとう!
この天井は、剥げて汚かったのでその時に塗ったのだそうだ。斬新な色に塗ったものだな!
エキゾチックな雰囲気も出てうまく和洋折衷の空間を演出している。


ところでこの変わったインジケーター、温度計かと思っていたら、時計なんですよ、と。ええっ、これが?
外国製と思われるこの時計、窓に時間が、針が分を示すという。今も毎朝ネジを巻いたらちゃんと
動いていて、毎時ボンボンと音も鳴るそうだ。
でも10時なのに2回しか鳴らなかったり1時でも3回鳴ったり気まぐれなんです。ふふっ、かわいいですね(笑)
売ってくれと言って来る人もいますが売りません。そりゃそうです、大事にして下さいね!


試食に頂いたりんご餅は驚くほど柔らかくてふわふわでいい香り!りんご果汁を使っているのだそうだ。
皆へのお土産に購入し、長々とお相手頂いたことにお礼を述べ店を出た。

いやぁ、危うく外観だけで素通りするところだった、中を見れてよかったぁ!

奥に続く工場の建物を見ながら進んで行くと、その隣にこちらも少し古そうな民家があった。
いい感じの板塀だな、、、おや?


あっ、これは菓子型じゃないの!?


見ると皆微妙に違う。よくある花形やら鯛やら扇型やらの菓子型とは違い、小さな長方形がずらりと並ぶ
木の板は、パッと見ただけでは単なる意匠と思ってしまうが、我ながらよく気づいたものだ(笑)


よく見ると文字が入っているな。なになに、高砂堂謹製、落雁。ああ、高砂堂の菓子型か。


じゃあこの建物も高砂堂さんのお住まいだったのだろうな。今は生活の匂いはしなかったが。


いや~面白い。やっぱり歩くと楽しいなぁ!


続く。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1991

Trending Articles