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Channel: まちかど逍遥
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熱海に寄り道 ~旧日向別邸

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東京の朝陽館を朝7時頃出発して、熱海へ向かう。
9時過ぎに降り立った熱海の駅前は観光地らしい明るさが感じられてなんだかわくわくしてきた。


ロータリーから二本の下り坂の商店街が伸びていて、いずれも賑やかで楽しそう!
しかし熱海は山の斜面に広がるまち、まずは上手の方から散策しよう。

駅前から少し坂道を上った見晴らしのいい高台には、別荘や邸宅や、邸宅の跡地?などが並ぶ。
広い一角ではなにやら工事中。計画を見れば29階建てのマンションが建つようだ。はぁ~、ここに?
このあたりに今あるマンションはせいぜい中層で、タワーマンションなどかなり異質。。。景観ががらりと
変わってしまいそうだ。


海に面した下り階段の下に、重要文化財の旧日向別邸がある。


この建物は、大阪の唐木屋の総領であった日向利兵衛の別邸として、渡辺仁の設計、清水組の施工により
1934(昭和9)年に完成した。但し、土留めを兼ねたコンクリート打ちの地下室は当初ほったらかし
になっていたようだが、完成直後に来訪したブルーノタウトに、地下室の増改築が任せられた。


地下室はこの庭の下の部分である。
地下室とはいうものの崖地のため海側一面が開放され、相模灘が目の前に広がる絶景なのだ!

残念ながら内部は写真撮影禁止。。。

竹を曲げた手すりのついた半円形の階段から地下室に下り立つと、京都の夜祭をイメージした
竹製照明器具の電球がずらりとぶら下がる社交室である。まるでイカ釣り漁船のようにも見え、
はっとする空間である。その奥の洋室はステージのような階段があり、あかね色に染められた布が
壁に貼られている。その奥の和室もロフトのような高座敷があるが、これは勾配地のため山側の床が
上っているからである。木部がすべて拭き漆仕上げで、お茶屋建築の意匠も取り入れているようだ。
建具を跳ね上げる構造の日本の蔀戸を可動式のルーバーに仕上げてあるのも面白い。
桂離宮などの優れた日本建築をリスペクトしながらイタリアの海辺と重ね合わせたという空間づくりが
素晴らしく、たった3部屋のみだが見ごたえがあった。

案内していただいた中井さんは、元々専門家でなかったのにこの建物を調べ上げて報告書を作ったり、
古い建築を守るためのNPOをつくり全国で講演したりされているのだとか。
この辺りには企業の別荘もまだいくつかあるが非公開だという。

さて旧日向邸を出てまちをうろうろ。駅前にはツボど真ん中の温泉があったが、まだ開いていない。
うわー、残念!




商店街の裏手の路地に入ったり、細い階段を降りたりすると、たまらなく昭和な風景が広がっている。




階段のある風景は魅力的。


表通りの古い旅館はまだ現役のようだが、裏手に建つものは崩れかけていたりする。








工事業者が入っているところもあり、改修するつもりなのだろうか?
勾配地のロケーションは魅力的で、石垣や階段などもあり活かしたら素敵なお店になると思うなぁ。


古くからの温泉観光地はいっとき寂れて老舗旅館さえ廃業とか身売りとか淋しい話が聞こえていた。
しかし最近はまた外国人のお客が増えているようだ。安っぽい路線に走らず、この歴史ある温泉地の
雰囲気を守って行ってほしいなぁ。


続く

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