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Channel: まちかど逍遥
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台大医院旧館のタイル

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3月の台湾の旅の続き。

台北賓館の見学前に、台大医院も見ておこう。正式名は国立台湾大学医学院附設医院。日本統治時代に建てられた建築が
今も外来と一部病室として使われている。設立当時は東南アジア一の規模を誇る近代的病院だったという。

赤レンガに白い花崗岩の帯が入った辰野式の華やかな建物。大きな三角形のペディメント、中央には大きな丸窓、
アーチ窓にはキーストーン風の装飾。車寄せの柱とシンクロするような2階の列柱、ゲタ歯のような軒周り・・・・と、
大正末期にして過剰なほどの装飾をまとったルネサンス風の壮麗な建築・・・・しかし私は外観よりも内部が好きなのだ。


開け放たれた入口を入ると、巨大な吹き抜けのホール。真っ白なドーム天井は正方形で、ほぼ3階分くらいの高さがある。
外観の派手さから一転して、シンプルですっきりしたデザイン。1階から2階までを貫く大きなアーチが1辺に3つずつ。
12のアーチに囲まれた静かなホールの真ん中に佇み、天井を見上げる。
職員さんもまだ出勤していない朝早い時間のため、この大きなホールには誰もいないのだ。私一人で独占!


床のクオリータイルはレンガ色の濃淡と白の三色使い。よくある八角形+正方形の組み合せよりもう少しアレンジされた
八角形+長六角形+正方形の組み合せ。


そして、特に私が気に入っているのは、壁に貼られたベージュと淡いローズピンクの2色のタイルである。
地味すぎず、ラブリーすぎず、病院にふさわしいやわらかな色合い。


たっぷりとかかった透明感のある釉薬は、溜まり方にムラがあるためタイル一枚一枚違う色となっている。
そして一枚のタイルのうちでも色の濃淡ができている。無地タイルと呼ぶには抵抗があるほど、表情豊かで
手仕事のぬくもりを感じさせる質感だ。それを濃淡のグラデーションの方向もあえてランダムに貼ってある。


コントラストの差がほとんどないこの2色を並べて貼ることで、光の加減かと思わせるような、ほんのり、
じんわりとした装飾の表現となっており、柔らかく包み込まれるような感覚が生まれている。


ピンクのタイルは、十字か、花模様か。


この釉薬の溜まりと貫入がいいなぁ!


ホールから続く通路にもアーチの梁と、タイル貼りの柱が並ぶ。


柱の美しい納まり。。。
内部に使うタイルを選定したのは設計者の近藤十郎だろうか。このタイルの選定には強いこだわりがうかがえる。
いや、わざわざここのために色指定して焼かせたのではないかとすら思う。どんなことを考えてこの色にしたのか、
台大医院タイル秘話を聞いてみたいなぁ。


2階へ上る階段の踊り場の壁にあったレリーフ。どんな病人にも手を差し伸べ、高度な医療を提供する、近代病院と
しての理念を描いたものなのだろうが、よく見ると結合双生児の絵もあったりしてちょっと怖いな。。。


2階は抜き抜けのホールをぐるりと囲むように幅の広い回廊がめぐっている。特に何かの用途があるわけでもなく
ゆっくり歩き回ったりすることのできるスペースである。


ホールを一望すると、9つのアーチが一度に視界に入ってくる。壮観!!


片隅にあった塔屋へ上るための螺旋階段。




タイルの色に合わせたピンクのプラスチックチェア。このセンスにキュ~ン




ぼちぼち職員さんも出勤の時間帯。昼間だと患者さんも大勢いるのでなかなか写真も撮りづらいが、早朝だったので
心おきなくこの建物の中に身を置き、空間を堪能することができた。


続く。

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